クリエイティブの評価は、必ずしもブランドへの影響力につながらない

2020.02.05 広報室
広告クリエイターたちにとっては少し耳の痛い話になるのかもしれない。これまで高く評価されたクリエイティブこそが、ブランドにも大きな影響を与えると考えられてきたが、実は今そうした固定観念が覆されつつあるようだ。なぜ独自性のある受賞広告が、広告の効果自体を失いつつあるのか。その要因を分析すると、新たなクリエイティブのヒントが見えてくる。

クリエイティブが効かない?

長年、多くの広告クリエイターたちから注目を集めてきた世界最大級の広告賞であるカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(カンヌライオンズ)。これまでアワードを受賞した広告作品といえば、その効果が高いものであることを当然のことのようにしてきたが、それが最近では事情が異なってきているという。

その理由としては、クリエイティブが短期的な売り上げを重視するキャンペーン活動に主眼を置くようになっていることや、もちろんデジタル化の浸透に伴うメディアや広告市場の変化が指摘されるが、今回カンターが実施した分析によれば、その問題の要因はさらに奥深いところにあるという。なぜ受賞作品のような評価の高い独自性のある広告が、ブランドへの影響力を失いつつあるのか。または、どうすれば広告の効果を高めることができるのか。2019年のカンヌライオンズの受賞広告をもとに探っていこう。

受賞広告=ブランドへの影響力が高いとは言えない

今回、カンターのオンライン調査およびインサイトストアの「カンター・マーケットプレイス」を通じた、独自の広告効果解析ツール「Link Now」を用いた分析によれば、 「クリエイティブの評価」と「広告効果」はイコールではないことが判明している。

実際、2019年のカンヌライオンズ受賞広告のうち、短期、長期に関わらず、高い広告効果を示したのは、全体の4分の1に過ぎなかった。しかも、長期間の広告効果を測定するLink Nowの指標「ブランド貢献力」では全広告の上位30%に入る高いスコアを示したのは、受賞広告のうち、たった6つだという結果が出た。

なぜクリエイティブの高さを誇る受賞広告の効果がここまで落ち込んでいるのか。そもそも広告業界のクリエイティブは、独自性と、それをうまくブランドと紐づけられること。そして、他ブランドとの差別化や視聴者を引き込むことが同時に求められてきた。

確かに2002年~2019年のカンヌライオンズ受賞広告を対象にLink Nowでデータベース分析を行ったところ、受賞広告は独自性と視聴者を引き込む力においては高スコアを示している。独自性を持つクリエイティブは興味を引き付けることができるし、引き込まれるクリエイティブは視聴者から向けられた興味をキープすることができるからだ。2019年の受賞広告においても同様の結果となっている。

例えば、銅賞を受賞した女性下着メーカーBerleiの広告「Boob Balls(おっぱいボール)」では、スポーツブラでサポートされていない乳房組織が受ける衝撃をユニークに表現して、その独自性が注目を集めた。

BRONZE AWARD 2019
Berlei SS Campaign: ショック要素によって注目される事実は否定できない。

広告とブランドとの紐づきこそがブランドに大きな影響を与える

しかし、クリエイティブがブランドにインパクトを与えるには、独自性と引き込む力だけでは十分ではない。ここで重要なことは、クリエイティブが明確にブランドと紐づけられている必要があるということだ。カンターの調査では、ブランディング(広告とブランドの紐づき)こそが、ブランドに大きな影響を与え、強固にブランディングされた広告ほど高いセールス効果をもたらすことがわかっている。

ブランディングを実現するには二つの方法がある。一つは広告のストーリーの中で記憶に残っていることとブランドが結びついていること。もう一つは、時間をかけて継続的にブランドキューを育てることである(ブランドキュー:ブランドロゴ・キャッチコピー・キャラクター・サウンドロゴなど視聴者がブランドを連想できるようにするもの)。

つまり、ブランディング(広告とブランドの紐づき)こそが、ブランドに大きな影響を与え、強固にブランディングされた広告ほど高いセールス効果をもたらすことがわかっている。

例えば、アメリカの飲料ブランドBuschの「What Beer is it?(それ、どこのビール?)」という広告は、カンターのブランディング指標で抜群の高スコアを獲得している。分析においても、視聴者の感情がピークに達する瞬間に、Buschというブランドがしっかりと組み込まれるよう入念に制作された広告コンテンツであることが明らかになっている。

BRONZE AWARD 2019: Busch Beer
※ 缶を開ける音にBuschブランド名をそのまま使っただけでなく、ブランドが登場するシーンそのものがジョークの要となっている見事な作品

いかに差別性のあるブランドとして記憶に残すか

もちろん2019年のカンヌライオンズ受賞広告の中でも、広告の独自性とブランドをうまく関連づけられているものもある。だが、独自性がある故に高い評価を得たクリエイティブも多くの場合、ブランドと紐づいていないことがある。

もし長期的な視点でブランドを育て構築し、市場シェアの拡大やプレミアム価格を設定し維持したいのであれば、人々の記憶の中にブランドが自分にとって意義があり、かつ差別性があるという印象を残すことが求められるはずだ。

ただ、2019年のカンヌライオン受賞広告を見ても、意義のある差別性をもったブランドを連想させる広告は依然として一部だ。 カンターでは、独自のブランド・エクイティ測定のフレームワークをつかって、 ブランドがどれくらいダイナミックで革新的なのか、または他のブランドとどれくらい違っているのか、消費者のニーズが、機能的ニーズや情緒的ニーズ、社会的ニーズをどの程度満たすと見なされるか、などを様々な指標で測定している。

「クリエイティブの評価」と「広告のブランドへの影響」はイコールではない。この指摘は今後、広告のパフォーマンスを向上させる余地がまだ残されていることを示している。

後編では、Link調査を使ってさらに受賞作品を検証し、ブランド構築するために最適な広告のヒントを明らかにします。

  

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