2018.12.10

アジアの消費者は、自分たちが日頃から関心を持っている社会課題にブランドが取り組むことを期待している。

PURPOSE IN ASIA アジアの消費者実態調査「Purpose in Asia」レポート公開

KANTARは、アジアのような多様性をもつ地域の消費者にとって重要な問題とは何かを定義し、測定した「PURPOSE IN ASIA」調査レポートを公開します。2018年8月から9月にかけて9カ国で行われたこの調査は、アジア市場におけるブランドの役割と今後の課題を示すものです。尚、調査対象には日本は含まれておりませんが、日本発のブランドにとっても、アジア市場の消費実態を把握することは極めて重要です。多くの方に今回の無料レポートを手にとっていただけるよう、本記事でご紹介いたします。

PURPOSE IN ASIA

アジア市場における調査ポイント

  • 「自分たちが直面している社会課題にブランドは取り組むべきだ」と回答する消費者は90%以上。
  • 「すべての人に健康と福祉を」と「貧困をなくそう」の2つがもっとも重要な社会問題となっている
  • 6割以上の人たちは、自分たちの考えにより合った考えをもつブランドを選択する

アジアの消費者は、個人的に自分たちが日頃関心をもっている社会課題に取り組もうとしてくれるブランドをより好む傾向にあります。このたび、KANTARが発表した調査レポート「PURPOSE IN ASIA」では、10人中9人の消費者が、自分たちにとっての関心事である地域の課題に対して、ブランド側からの何らかの取り組みを期待している、という結果が明らかになりました。これはブランドが目指そうとしている付加価値ではなく、むしろブランドの活動による課題解消への期待感をより高くもっていることを意味しています。

消費者にとって、ブランドが自分たちにとってより重要な社会課題に取り組んでいるかどうかが、その企業活動の意味を有するか否かを左右することになります。今回の調査対象者の6割以上の人たちが、自分たちの考え方に呼応してくれるブランドからの購入傾向が高く、同時に同程度の割合の人たちは、「持続可能な開発目標」に関わってくれているブランドには、「より高い金額を支払っても、そちらを利用したい」と答えています。

国連による「持続可能な開発目標」

また今回の調査でわかったことは、影響力のあるグローバル・メディアが取り上げ、国際的ブランドがキャンペーンをしていることの動機や要因と、実際地域に住む消費者が問題としていることには、大きな隔たりがあるということです。「気候変動に具体的な対策を」や「ジェンダー平等を実現しよう」という二つの社会課題は彼らにとって認知度は高いものですが、それよりも自分の家庭や個人にとって身近な問題となる「すべての人に健康と福祉を」と「貧困をなくそう」というこの二つの問題により高い関心を示しています。今回の調査では、ほかにも「みんなに質の高い教育を」「途上国の飢餓をゼロに」「働きがいも経済成長も」の選択肢を設けたのですが、先に挙げたこの2つの問題には圧倒的に高い関心が示されています。

今回の調査にあたり、こうした課題に関する情報源としてソーシャルメディアがどのような役割を果たしているのかについても調査しています。その結果は注目に値するものとなりました。アジア地域では依然として「テレビ」が社会課題の情報源として、もっとも普及されるチャネルであることです。ソーシャルメディアからの活動の普及は、社会課題に対しての取り組みに人々が参加しやすい状況をつくっています。半数以上(53%)の人たちは、日常的なこうした課題解決活動に関してのソーシャルメディア投稿は良いものであると考え、45%の人たちは「そうした投稿や記事をシェアしたことがある」と答えています。この傾向は、特にタイ(68%)、インドネシア(67%)、フィリピン(65%)などの新興国で強いこともわかっています。

結果的に、ソーシャルメディアは人々の行動に影響を与えています。61%の人たちは日々の暮らしのなかで、ソーシャルメディアで見たこれらに関する投稿によって「より強く意識するようになった」と答えていますし、さらに3人に1人(31%)は「それらの投稿は自分たちの行動に変化をもたらしたことがある」と答えています。

では、ブランドはこうした社会課題に対してどのように取り組めばいいのでしょうか。そこで大切な鍵になるのが、「信頼できる」ということです。ブランドの取り組みが単に見せかけであったり、実際の活動としては様々な問題があったり、感情的な側面について配慮すべきことを見誤ったりすると、それに対する消費者からの反応は非常に速いものとなっています。また、より成熟した市場の方が、ブランドがこれらの問題と関わっていることをより懐疑的に見る傾向にあることが分かりました。たとえばオーストラリアではたった33%の人々しか「ブランドによる社会課題への取り組みは信頼できるものである」と考えていないのです。一方、インドでは74%の人たちが「ブランドの活動は信頼できる」と考えており、結果は対照的です。

人々にとって重要な社会課題に対して、ブランドは率先して取り組むという大切な役割を担っていると、アジアの消費者は考えています。「持続可能な開発目標」に関して、消費者に対する啓蒙活動を行うことこそが、まずははじめの活動として採択されなくてはなりません。その上で、開発支援プログラムを始動させ、資金調達し、その次に運営組織に対する資金提供がなされていくのです。
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KANTAR  Insights Divisionのリージョナル・デジタル・コンサルタントであるJoy Lee は次のように語っています。

「ブランドでは、目標とするものがもっている力について何年もかけて理解してきました。しかしながら、アジアという多様性をもつ地域で一体どのようなことが共感を呼び、きちんと消費者の信頼を得るのかを特定する作業が、いま課題とされています。ブランドは社会課題に関わることができますし、そこに変化をもたらすことができます。ブランドのグローバル・ステージとして雑多なことをしなくてはならない、ということではないのは、朗報でしょう。この調査で示されていることは、ブランドは地域の指導者をサポートし、たとえ小さくても、有意義な取り組みをすることで、その地域に住む人たちにとって大切なものとなることを表しているのです。」

この調査について:

本調査「PURPOSE IN ASIA」は、インターネットにアクセス可能な18歳以上の3000人を対象とした、質量的調査です。2018年8月、9月、オーストラリア、インド、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、台湾の9つの市場で実施されました。アジアのような多様性をもつ地域全体で、人々にとって重要な問題とは何かを定義し、測定するこの調査は、今後の課題を示すものとなります。また本調査では、国連による「持続可能な開発目標」(SDGs)の一貫したフレームワークを利用しています。

ソーシャルメディアに関する分析はNetbase を利用し、それぞれの市場で最も重要と選択された課題について行われた会話のなかで、異なったニュアンスで話されている文脈への理解を抽出しました。元データとしては、SNSにおけるコメントのなかでも有益なものやそうではないものを、KANTARのリサーチ・データ原則を活用して生成されたものを用いています。中国本土では、ソーシャルメディアの事情がかなり異なっていることから、そこは例外的に取り扱うことで、より均質なコンテクストのなかでの比較調査を可能にしました。

For more information:

Hannah Nicholl, Marketing and Communications
North Asia, Southeast Asia, Pacific, Insights Division, Kantar
Hannah.nicholl@kantar.com, +65 88766022

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