ブランドZ™データベースから読み解く、KANTAR のブランド・エクイティ

2018.08.21 広報室_管理者

成功するブランドには様々な特徴がありますが、大まかに3つの要因:差別性、意義性、想起性に分けられます。想起性を高めることでブランドは成長する可能性が高く、有意義な差別性がある場合には、より成長を加速させることが可能です。強力なマーケティング活動は、これら3つすべての指標でブランドを成長させることができます。

ここでは、KANTAR のグローバル・ブランドZ(ブランドZ™)調査による分析データとともに世界のさまざまなブランドの成功例を見ていきます。

想起性 SALIENT

消費者は、商品のニーズを感じたときに真っ先に思い浮かぶブランドを購入する傾向があり、これをブランドの「想起性」(SALIENT)といいます。

世界で最も想起性のあるブランドのうちの1つにコカ・コーラが挙げられます。ブランドZ調査(ブランドZ™)による下図のグラフがそのことを示しています。(各セグメントの円周は、そのカテゴリーにおける各要素の重要性を示し、半径は各要素におけるブランドの強さを表しています。また、スコアはカテゴリー平均で指数化されたブランドのパフォーマンスを示しています。)

Mexico: Coca-Cola 2014

コカ・コーラ(Coca-Cola)は、他の多くの市場と同様にメキシコの清涼飲料市場で想起性においてとても高いスコアをマークしています。グラフの中心に示されているパワースコアは、態度指標から算出され、純粋な先有傾向に基づくマーケットシェアを指しています。その他想起性の高いブランドの例として、ロシアのロシア貯蓄銀行、ポーランドのPZU保険、ロシアのアエロフロート、韓国のヒュンダイ、チェコのシュコダや世界中にあるマクドナルドなどが挙げられます。

差別性 DIFFERENT

長年にわたり多くのカテゴリーで、ブランドが機能面で実質的に差別化を図ることは不可能ではないものの稀有でした。しかし、小さな違いでも競争において情勢を変え、有利に働かせることが充分に可能です。その差別性には、特徴や触感、印象、あるいは未だ用いられていない既存の機能的利点などが含まれます。テクノロジーが急激に発展する市場では実質的な差別化は珍しくありませんが、その差を潜在顧客に気づかせる、あるいはカテゴリーへの期待を再定義し、他が追随するような流行を作っているということを気づかせる必要があります。

アップル(Apple)のiPhoneはカテゴリーを再定義するほどの差別性により成功したブランドの良い例です。2007年にiPhoneはボタンの配置や画面の大きさなどデザインの先例を作り始めました。安いコピー商品がすぐに市場に出回る中、iPhoneは差別性を築き、プレミアム価格にも関わらず高いマーケットシェアを維持しています。形状の差別性の他に、iPhoneは理想的、積極的、魅力的且つ大胆に見えるなどユニークな特徴を持っています。これが、2015年にKANTAR  / WPPのグローバルブランドランキング Top 100でAppleが首位となった理由の1つです。下図より、中国におけるiPhoneは意義性及び想起性をうまく高められており、また大幅に差別性があると見られていることが分かります。他にもノルウェーのテスラ、ドイツのパンパース、オランダとポーランドのIKEA、フランスのフリーモバイルなどが差別性の高いブランドに挙げられます。

China: Apple iPhone 2014

意義性 MEANINGFUL

ブランドの意義性や顧客のブランド体験を築く上で、マーケティングは重要な役割を果たしています。ブランドが有形か無形かにかかわらず、情緒的な親近感あるいは機能的ニーズが満たされているかどうかにかかわらず、消費者に与える意義性のある印象は大きな影響力を与える可能性があります。単に、「他のブランドには親しみがないがそのブランドには親しみがあるから」、「デザインがよりユニークだから」といった理由でブランドに意義性を感じているかもしれません。主に意義性は、個人的なブランド体験から生じています。例えば、母親がそのブランドを使用していた、友達から勧められた、他のブランドに比べてそのブランドがあなたのニーズに合致したなどが挙げられます。長い歴史があるアメリカのデニムブランド、リーバイス(Levi’s)は、女性アパレル市場において意義性と想起性の高いブランドです。特に差別性があるとは受け取られていないものの、率直で信頼性があるブランドと捉えられています。

US: Levi’s 2014

中国の料理用油市場は既存の中国ブランドで独占されていますが、特に西洋のオリーブオイルは中国ブランド Mightyを通してブランドを確立しています。まだ強い想起性はないですが、意義性と差別性があると知られています。他の市場で意義性が高いブランドとして、日本の全日空、シンガポールのシンガポール航空、タイのトヨタ、フランスのグーグル、中国のサムスン、インドのカストロールやロシアのロシア貯蓄銀行があります。

China: Mighty 2014

意義性、差別性、想起性の利点

上記の例は、約20万件のブランドレポートを含むブランドZ( ブランドZ™ )データベースからパターンを明示しています。ブランドは意義性や差別性、想起性、またはこの3つの組み合わせによって成功することができます。しかし、これら3つの要素は等しく重要なのでしょうか。

以下の図に示した分析では、1年の間でブランドに意義的差別性(上位4分位)があるのか、ブランドがその後5年でその意義性及び差別性の変化と想起性に組み合わさるのか、また、同期間の調査ベースのマーケットシェアがその変化と関連しているのかを示しています。この分析から、想起性がブランドを成長させるのに重要であることがわかります。しかし、有意義な差別性のあるブランドは2倍の速さで成長する傾向にあり、一般的に想起性がなくても成長します。ブランドが有意義に差別化されていれば、ブランドの成長は加速します。

意義的差別性は想起性を刺激する

より想起性のあるブランドへ

どうやってブランドはこれらの指標においてパフォーマンスを伸ばすのでしょうか。強力なマーケティングアクティビティが大きく影響しています。

イギリスの航空会社イージージェット(Easyjet)は「安くて愉快」というポジショニングから脱却するため、ヨーロッパでイージージェット広告キャンペーンを開始しました。低価格な航空券により得られる楽しさと人との繋がりを強調したキャンペーンはとても印象的でした。下のデータを見ると、イージージェットはキャンペーンによりパワースコアと同様に想起性を大幅に向上させていることがわかります。

UK: Easyjet

より差別性のあるブランドへ

中国のプレミアム歯磨き粉 Yunnan Baiyaoは、グローバルブランドとの激しい競争に関わらず大幅な成長をし続けています(2013年の8.5%から2014年10.6%へー Euromonitor調べ)。Yunnan Baiyaoの成分である中国ハーブが歯茎の止血を助け、差別性のあるブランドとして認知度がとても向上しました。ブランドの特性と「口腔問題の解決」というメッセージを重視するデジタル広告やスポンサーシップがブランドをより意義性のあるものへとポジショニングし、パワースコアを伸ばしています。

China: Yunnan Baiyao

2007年には、サムスン(Samsung)の幅広い品揃えと低価格なハンドセットに、多くの消費者がそのブランドに意義性を見出しました。良好な流通と膨大な広告がブランドの想起性を維持しています。2009年のギャラクシー(Galaxy)が遂げたイノベーションはブランドの差別性を成長させ、下図からも分かるように、その差別性がアメリカでの市場シェアを伸ばしました。

Samsung grows Differentiation with the launch of the Galaxy

イギリスでは、スーパーマーケットのアルディ(Aldi)が「乗り換えて得をしよう(swap and save)」 というキャンペーンを始めました。アルディはディスカウントで知られている一方で、このキャンペーンは限られた商品数や安売り店での買い物に対する社会的恥ずかしさのイメージを払拭することを目的としていました。テレビ、平面媒体、デジタル広告を通して、意欲的にキャンペーンに参加し4週間主にアルディで買い物する人たちの流れに、消費者が乗っていきました。これにより、市場シェアが増加、ますます差別性があると受けとられ、パワースコアが向上しました。このアルディのキャンペーンはIPA Effectiveness awardを受賞しています。

UK: Aldi – Grocery Stores

アメリカでトレーダー・ジョーズ(Trader Joe’s) は特徴のある売り場で珍しい食品を手頃な値段で販売しています。従来のマーケティングを大幅に無視し、顧客経験と口コミを頼りに地元のラジオ、屋外、ソーシャルメディアで広告を行いました。過去数年の間にブランドの想起性は低迷しましたが、差別性がますます高まり、差別性のスコアが158から196に伸びました。パワースコアとマーケットシェアが共に伸びています(2011年の0.9%から2014年の1.1%へーEuro monitor調べ)。

より意義性のあるブランドへ

イギリスの保険会社アヴィヴァ(Aviva)は、ブランドの価値、サービス、イノベーションに関するメッセージを伝達するために、シリーズの主役を務める有名な俳優、コメディアンのポール・ホワイトハウスを起用しました。その結果、車の見積もりが急騰しました。データによると、ブランドにより意義性があると受けとられ、パワースコアが伸びています。このキャンペーンもまた、IPA Effectiveness Awardを受賞しました。

UK: Aviva – Insurance

2009年にコカ・コーラ社は環境に優しいというポジショニングでいろはす(I Lohas) ブランドを日本で発売しました。ブランドはボトル飲料水のカテゴリーの壁を壊すためにまだ満たされていないニーズに踏み込みました。調査により消費者は、「環境問題に対して何かしたいという意欲はあるが、行動に移せていない」と感じているということが明らかになり、薄く軽いペットボトルは、いろはす が消費者にCO2排出量のより少ないブランドを選ぶ意味を与え、ボトルを捻じるという行為を生み出し、消費者が環境への関わりを示す機会を提供しました。ブランドにはとても意義性があり、2014年には10億ドルの小売り売上高をたたきだし、年間で8%もの成長を遂げました。

Japan: I Lohas

複数の指標における成長

成功したマーケティング活動は多くの場合、複数のキー指標を通じてブランドを成長させます。

ダヴ(Dove)というブランドは、2004年に始まったキャンペーン「Real Beauty」と同じ意味をあらわすようになっていますが、非常に競争の激しいカテゴリーにおいて未だにそのキャンペーンはブランドに利益をもたらしています。2013年に行われた「Real Beauty Sketches」は、女性の自分自身についての口述で画家が女性をスケッチするという印象的な方法で自尊心の低さに注目を集めました。このキャンペーンはIPA Effectiveness Awardを受賞しました。そのキャンペーン期間を超えてイギリスで、ダヴは意義性と想起性を伸ばしました。

UK: Dove – Female Beauty and Skincare

オーストラリアの有名なブランドであるコモンウェルス銀行(CBA)は、新しい地方銀行の成長を含む競争上の脅威を乗り越えなければなりませんでした。そのため、CBAはCANキャンペーンで顧客サービスを倍増させました。イノベーションと顧客経験においてリードするために、CBAは技術に10億ドル以上の投資をしました。CANキャンペーンは、すべてのタッチポイントにおいて強固な連結を行っていました。これは、市場でリーダーシップを維持したままブランドを広めました。3つのすべての指標においてCBAのエクイティは大きく成長し、態度的にも顧客に関してもマーケットシェアを伸ばしました。

Commonwealth Bank’s CAN campaign helped grow equity by focusing on a differentiated experience

2011年中国のフォルクスワーゲン(Volkeswagen)は、ポジショニングを失い、主流で賢明で実用的に捉えられるようになりました。ブランドはマーケットシェアの低下に直面しました。そこで、フォルクスワーゲンは中国の消費者に未来の車のデザインのアイデアを出してもらうというPeople’s Car Projectを開始しました。そして、2012年には彼らのアイデアを実現し、表彰しました。デザインチームは浮上する車というアイデアを採用し、開発には映画などで描かれた磁気浮上技術を用いました。これにより、想起性、意義性、差別性のあるブランドとなったのです。パワースコアが成長し、売上は2012年の260万から2014年の340万に伸びました。(Wards Automotive Reports and Sterne Agee estimates参照)。

China: Volkswagen

中国で、洗剤ブランドのブルームーン(Blue Moon)は、2012年の店舗内のパフォーマンスに注力した時を除いて、大規模な支出と統合キャンペーンに集中しました。4年以上をかけ、より意義性、差別性、想起性のあるブランドになりました。パワーは向上し、金額シェアは急激に増加しました。

In China Blue Moon detergent engaged people in-store to engage consumers with a different experience
想起性、差別性と意義性があるブランドは成長する可能性が最も高く、強力なマーケティング活動はエクイティを向上させます。

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  • 132,000件のブランドに対する調査
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marketingjapan@kantar.com

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