マーケターのためのブランド戦略 人がブランドを選ぶ仕組み

2023.05.16 web管理者

購買させる仕組みからブランドを考える

なぜブランドが大事でしょうか。毎日の生活は数多くの製品・サービスの消費によって成り立っており、その選択と購買を少ない労力で間違いないものにしてくれるからです。

カンターでは自主調査BrandZデータベースを用い、消費者の購買選択行動は、ブランドの「想起性」=ある購買ニーズに対してブランドが真っ先に想起される力に基づくことを明らかにしました。想起性は広告などのタッチポイントによる接触の他、実際の購買やサンプリングなど体験による影響を受けます。一方で、消費者は実態の利用体験などを通じ、ブランドがどれだけ自分のニーズを充たしてくれるかを評価します。このニーズ充足度が高ければ、利用者はブランドに対し愛着(アフィニティ)を感じるようになります。これらニーズを満たす度合いや愛着などの体験価値をカンターでは「意義性」と呼びます。消費者が重視するタッチポイントに、他の人の利用体験に基づく口コミが含まれるのは、このブランドの「意義性」を確かかめるのに役立つからです。カテゴリーの利用体験が蓄積されると、自分なりの好みがでてきたり、現在利用している製品サービスでは不足している面(アンメットニーズ)が見えてくることがあります。この時、今利用しているブランドとは明らかに違った特長を持ったブランドがあると、そのブランドに興味を持つようになります。人々が新製品や流行っているものに興味を持つのは、単にミーハーに飛びついているだけではなく、実はこのような経験則に基づいています。こうした要素をカンターでは「差別性」と呼び、意義性・差別性と共にデータベースで指標化しています。 つまり、あるブランドを買うときにパッとおもいつくかどうか、また試そうと思うときに他のブランドと異なる点が選ぶ理由になります。ただし、他のブランドと異なる差別性だけでなく、自分にぴったりである意義性を伴うことがポイントです。これを意義のある差別性といいます。



「意義性」と「差別性」に想起性を加味することで、購買選択に対する説明力が更に上がります。想起性が高いブランドにも差別性が高いものと低いものがあり、後者はロイヤル顧客の習慣的購買だけでシェアが維持されるのに対し、前者は新規カテゴリーユーザーや競合ユーザーを取り込む力が高く、この新規顧客獲得力を意義性と差別性(特に差別性)で説明できるからです。

「意義性」「差別性」「想起性」を合わせて消費者の頭の中への影響力をワンナンバー化したものを、カンターではブランドパワーあるいはデマンドパワーと呼んでいます。デマンドパワーは、ブランドが消費者の頭の中を占拠できる力を示すマインドシェアと等価値となります。

ブランド選定に影響するアクティベーションポイント

実際の市場の購買環境では、広告などのタッチポイントによる接触体験とブランドの利用体験の他に、店頭などで購買のトリガーとなるアクティベーションポイントが存在します。


アクティベーションポイントの作用の仕方について、ロイヤル顧客と非ロイヤル顧客に分けて説明します。

【ロイヤル顧客】

先ほど説明した「想起性」「意義性」「差別性」のマインドシェアの3要素ですが、ロイヤル顧客の場合は想起性や意義性は「デフォルト」化されて、愛着度の高いブランド体験に基づき、検討の時間をかけることなしに購買刺激があれば即購買につながります。ショッパー調査で、棚のパッケージを見ただけでバスケットに入れるのに数秒もかからないことが多いのは、ブランドのロイヤリティループが効いているからです。

【非ロイヤル顧客】

一方、非ロイヤル顧客の場合、 「想起性」「意義性」「差別性」によるマインドシェアが高くても、アクティベーションポイントで「ドロップ」が起こることがあります。具体的によくある例としては、品切れや競合品の特売等です。この場合、折角頭の中はブランドが占拠していても実際の購買行動(マーケットシェア)につながりません。但し、これは逆のケースも起こりえます。マインドシェアは弱いのに、特売や配荷の高さによりマーケットシェアを奪取している場合もあります。


アクティベーションポイントでの購買刺激を、有名なB.J.Foggの消費者行動モデルに沿って図解すると以下の通りになります。

ロイヤル顧客は、ブランド関与度が高く、かつブランドが既に決まっていて購買が手軽なので、トリガーが即発動することがわかります。

一方で、非ロイヤル顧客の場合は購買環境での「手軽さ」が伴わないと購買のトリガーがかからない、ということになります。マーケターにとって購買環境の「手軽さ」は外的要因が多く、必ずしもコントロール可能とは言い難いことを考えると、ブランドへの関与度=マインドシェアを高めておくことがいかに大事かということがよくわかると思います。



カンターでは、米国のMASB*(マーケティングアカウンタビリティ規格委員会)によるMMAP審査プロセスを経て「企業の財務実績につながるマーケティング指標」 として認定されている、MDF(エム・ディー・エフ)というブランドエクイティ評価ツールのサービスを実施しております。MDFはブランド分析にも用いられ、グローバルカンター全体で使われている、長年にわたり検証されてきたブランド評価ソリューションです。詳しく知りたい方は下記までお問合せください。


本件に関するお問い合わせ先

合同会社カンター・ジャパン
PR/マーケティングチーム 
E-mail:marketingjapan@kantar.com


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