困難な状況下の新たなマーケティングプランの作り方II:生活者の「感情」に寄り添うブランディングとは?-SNS投稿から新型コロナウイルスに関する人々の感情を紐解く

2020.05.31 広報室_管理者

オリンピックの延期、新型コロナウイルス問題の対応のため緊急事態宣言の発動などを踏まえ、多くのクライアントが新たなマーケティングプランを作成しなくてはならなくなりました。

この様な流動的で先が読みにくい状況において、Kantarは複数の未来をシナリオをとして描き、計画を練ることが重要だと考えます。

前回の記事では、弊社が考える「未来シナリオ」をご紹介しましたが、本記事では、コロナ禍において現在の消費者の感情を紐解きます。

「未来シナリオ」と「人々が感情の根底で求めていること」を掛け合わせることで、これからブランドが何をすべきかが明らかになり、効果的なマーケティングプラン立案につながるのではないでしょうか。


なぜ感情に寄り添うブランディングは重要なのか?

消費者に選ばれるブランドは、製品特徴の差別化だけでなく、感情に基づいたブランド開発をしています。なぜなら、ブランドがもたらす感情は、消費者にとっては「ブランドの個性」と認識されるからです。

そして、その感情を一貫して訴求するマーケティングを行うことで、類似の特徴を持つ製品が出てきたとしても真似されにくく、強いブランドパワーを維持できます。また、その強さを兼ね備えたブランドは、今回のような困難に見舞われた時も、実際にいち早く回復することが実証されています。

Kantarの情緒ニーズを理解するためのフレームワーク「NeedScope (ニードスコープ)」は、人々の心理の普遍性を分析して開発されました。そして今回はこの知見をもちいて、ソーシャルメディア上の人々の投稿から新型コロナウイルスに関する人々の感情、人々が真に求めていることを紐解きます。

ソーシャルリスニングの情報を「NeedScope (ニードスコープ)」で分析すると…

新型コロナウイルスを取り巻く現在の状況について、ここ4ヶ月ほどの間にソーシャルメディアに投稿されている内容を見ると、多くの不安や怖さに対する発言の中に「対策」「防止」「希望」などといった言葉も見え、正しい「対策」を講じることで、現状を乗り切ろうとする日本の消費者の想いを読み取ることができます。

私たち日本人はこれまでにいくつもの困難、たとえば震災をはじめとする自然災害や伝染病に見舞われ、それを乗り越えてきました。海外でも非常時における日本人の平常心は驚きをもって報道されることもあります。SNS投稿からは、有事の際に状況を受け入れ対応するという日本人の特性を反映しているように見受けられます。

しかし、この「予防と対策を取りたい」という気持ちは消費者の感情に基づいていますが、それは一種類ではありません。根底には人それぞれ違う情緒のニーズが存在し、それらを掛け合わせると「予防と対策」に対する全く異なる情緒ニーズが見えてきます。

私たちは、それらに6つの呼び名を付けました。
ウェビナー「生活者の「感情」に寄り添うブランディングとはでは、各グループのニーズについてより詳しく解説しています。

Kantarのフレームワーク「NeesScope (ニードスコープ)」の見方
情緒ニーズは、集団⇔個人、エネルギーの高い⇔低い、2軸の組み合わせで表現します。上の頂点は一番エネルギーが強く、一番下は低い状態を示し、達成や成功の欲求のような個人志向は右にいくほど強く、調和を重んじて自然の成り行きを受け入れるような、自分よりも他社との調和を考える集団志向は左にいくほど強いことを示します。詳しくはこちら 

現状で最も割合が高いニーズは「理性的に備える」で全体の1/3となり、次に多かった「守り、平穏を見つける」と合わせると、いわゆる海外からみた日本人らしい(?)冷静できちんと対応(内向的で低いエネルギー)のニーズが約半分を占めています。

しかし、「決意をもって戦う」や「未来志向」という、積極的に前向きに課題解決をリードしていく、という情緒ニーズも少なくありません。

実際、Kantarの世界50か国以上の消費者意識調査バロメーター調査によると、この数ヵ月で消費者がブランドに期待することに大きな動きがあり、特に緊急事態宣言後の4月中旬には「ブランドは自らモデルケースとなり変化を導いていくべき」という意見が顕著に増えています。


消費者の情緒ニーズに応えるためにブランドができることを考え、新しいマーケティングプランを立てる

それでは、消費者が求めている情緒ニーズに、ブランドとしてどう応えていくかを5つのステップでご紹介します。

  • STEP1:消費者の感情に波長を合わせる
    あなたのブランドの製品カテゴリーで核となる重要な情緒ニーズを洗い出し、消費者の6つの情緒ニーズ(感情)と重ね合わせてみましょう。
  • STEP2:自分を定義する
    消費者の情緒のニーズに自分のブランドが応えられることは何なのかをしっかり見極め、「自分を定義」しましょう。単なる物性の価値だけでなく、自分のブランドはどんな意義を持っていて、何を象徴しているものなのかを再確認して明確にすることが大切です。
  • STEP3:発信する
    定義ができたら、しっかりと発信していくことが大事です。消費者はコロナ禍によって、今までとは違った方法でブランドからの情報発信を求め、繋がりたいと思っています。その際には、一方的にブランドが伝えたいことを押し付けるのではなく、ひとりの人間として語り掛け、彼らが求めていることに応え、不安を取り除き信頼関係を築くことが重要です。
  • STEP4:実行する
    特定の消費者の期待(情緒ニーズ)に対してブランドが具体的に約束したことを「実行する」ことが重要です。呈示した約束をきちんと果たすような行動を起こし、消費者の体験を通してその約束を実感してもらうことが大切です。
  • STEP5:自分らしさを維持する
    異なるいくつかの感情ニーズに一つのブランドで応えようとすると、それは今の状況に便乗して、日和見なメッセージを発信していると捉えかねません。成功しているブランドは、すべての人のあらゆるニーズを満たそうとはしません。ターゲットを選択し、発言と行動に一貫性を持っています。きちんと一貫性を維持し、そのブランドのありようと発信やアクションが一貫していることが重要です。

まとめ:

  1. いくつかの未来シナリオを踏まえつつ、コロナ禍において現在と未来の消費者の感情ニーズを把握する。(例:最も現実的な未来シナリオはどれで、その時の感情ニーズの割合がどれぐらいか)※Kantarの未来シナリオについてはこちら
  2. そして、自分のブランドをしっかりと定義し、消費者へ発信・コミュニケーションの実行に繋げる。

是非、コース修正を余儀なくされたマーケティングプランの再構築にご活用ください。

最後に

カンター・ジャパンは、4月30日にウェビナー「生活者の『感情』に寄り添うブランディングとは?」(日・英 各セッションあり)を行い、本記事の詳しい内容を皆様にご紹介いたしました。大変ありがたいことに、視聴者の皆様からの反響が大きく、様々なコメントやお問い合わせをいただいております。

【いただいたコメント・お問合せ内容】 

  • 困難な状況下での次の活動を検討しているなか、ヒントを得られた
  • 今まさにブランドを構築していく良い機会だと感じた
  • 発信だけではなく、発信したことに対するブランドとしての具体的な行動が必要だとわかった
  • 消費者の感情に寄り添ったブランディングの一つの方法として、理解しやすく、興味深かった。
  • コロナ後の心境・ニーズの変化についても予測していきたいので、将来のニーズを把握することもできるのか
  • 自社で考えるブランドと、消費者が受け止めるブランドが違う場合、どうしたらいいのか                       

などです。

また、ウェビナーにご参加いただいた方にも、この6つの感情のどれが、この状況を乗り切ろうとするご自身の気持ちに最も近いものだったかを投票していただきました。結果がこちらです。

このウェビナーを聞いてくださっているマーケターの方々は、予防策は引き続き講じながらも、未来に目を向け、エネルギーが強く動的な状態にある人が多くいらっしゃることがうかがえます。

コロナ禍における困難な状況が続くなか、カンターはブランドの成長・強化につながる対策を皆様と一緒に考えていきます。未来に備えるための新しいマーケティングプランやブランドビルディングの方法など、この状況を乗り切るための状況に応じたアプローチは他にもございますので、まずはお問合せください。

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本記事でご紹介している「NeedScope 」について詳しくはこちら

4月30日のウェビナー録画版を視聴されたい方はこちら

この記事に関するお問い合わせはこちらから

カンター・ジャパン/広報 
marketingjapan@kantar.com

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