KANTAR MILLWARD BROWN

【Knowledgeshare】運用型広告のブランディング活用—事例から読み解く!ビューアビリティとブランドリフトの関係

2017年10月18日 広報室

運用型広告で競合ブランドに差をつける秘訣とは?

昨今の逆風の中でも、運用型広告の利用は依然として増加が見込まれており、その利用目的もブランディングへシフトしていくと予測されている。本記事では、運用型広告*をブランディングに活用する際の課題を整理した上で、実際の事例から運用型広告でブランディングを成功させるための秘訣を紹介する。

*運用型広告とは:プログラマティック広告ともよばれ、DSPやSSPなどを活用したリアルタイムな広告枠の自動買い付けによって取引される広告。この記事では、運用型広告の中でも、検索広告やテキスト広告は含まない、ディスプレイ広告とビデオ広告の運用型広告を扱っている。

オンライン広告への逆風と今後の成長

昨年からオンライン広告に対する風当たりが強まっている。ビューアビリティ(広告の可視性)やアドフラウド(広告詐欺)、ブランドセーフティ(広告が表示される場でのコンテンツの質)懸念による出稿停止の問題など、オンライン広告の中でも運用型広告に批判的なニュースを目にすることが増えている。しかし、逆風の中でも運用型広告への出稿量は依然として衰えていない。質の問題はあるものの、純広告に比べて運用型広告は単価が圧倒的に安い。

eMarketerによるとデジタルで先行している米国の運用型広告の利用は今後も増え続ける見込みで、2017年に330億ドル(約3兆7000億円)、2019年には460億ドル(約5兆2000億円)まで増加すると言われている。また、電通発表の「2016年 日本の広告費」によると、日本でも運用型広告がインターネット広告媒体費1兆378億円の内、71%を占めるようになっている。

* 引用:DIGIDAY(日本版)2017
* 引用:eMarketer2017
* 引用:電通2016年日本の広告費

利用増加に加えて、グローバルでは運用型広告の利用目的もブランディングへと緩やかにシフトすると考えられており、現状では五分五分であるダイレクトレスポンス広告(クリックやコンバージョンを目的とする広告)とブランド広告(認知やメッセージ伝達を目的とする広告)の出稿比率が、2019年には8割をブランド広告が占めるようになるとする予測すらある。つまり、現在マス広告が主流となっているブランドコミュニケーションの予算領域に、よりオンライン広告が浸透していくため、プログラマティック広告の予算が増えるというシナリオである。

* 引用:DIGIDAY(日本版)2017

運用型広告をブランディングに活用する上での課題

そのような中、先日カンター・ミルウォード・ブラウンとコムスコアが共同で発表した白書では、プログラマティックを利用した間接購入の場合(運用型広告)と純広告のようなプログラマティックを利用しない直接購入で出稿した場合の広告パフォーマンスのギャップが際立っている。

まず、運用型広告ではボットなどの無効なトラフィック(IVT)の含有率が高かった。コムスコアのvalidated Campaign Essentials(vCE)によると、2017年第2四半期は運用型のディスプレイ広告の7%を無効なトラフィックが占め、純広告では4%となっていた。さらにビデオ広告では、運用型広告で10%、純広告で4%と、無効なトラフィックが約2倍以上発生していた。(図1)

▼図1:無効なトラフィック(IVT)の含有率比較:純広告vs運用型広告

また、同期間のビューアビリティ(広告の可視性)においても、純広告がディスプレイとビデオの両方で優れており、ビデオ広告でビューアブルだったのは、運用型広告では52%であるのに対して、純広告では74%だった。(図2)

▼図2:ビューアビリティ比較:純広告vs運用型広告

加えて、カンター・ミルウォード・ブラウンのブランドリフト調査、Brand Lift Insights(BLI)のデータによると、グローバルの運用型広告のキャンペーンとそれ以外を含む全てのキャンペーンとを比較した際に次の点が分かっている。

  • 運用型広告は認知系指標であるオンライン広告認知やメーセッジ連想など、ファネルの上流部分に位置する指標では純広告に比べると効果が低い
  • 一方で、ファネルの下流部分に位置する購入意向などのアクションに近い指標ではパフォーマンスが高い。

▼図3:運用型キャンペーンと全てのキャンペーンにおけるブランド指標への効果(ブランドリフト)

これは運用型広告のキャンペーンにおいて、ダイレクトレスポンスを目的に配信が最適化されやすく、すでに購買行動をとり始めている(イン・マーケット)ファネルの下流部分の人を対象に広告配信が集中しているからではないだろうか。一方で、まだブランドへの認知や態度が形成されていない人には、広告が配信されにくいことが考察される。

▼図4:ブランドコミュニケーションのファネル構造

現状は上の図4の最下層にあたる購入意向や実際のアクションに最適化された広告配信が運用型広告の主流だが、今後の成長が見込まれるブランディング利用では、より上流のブランド認知やメッセージ連想を意識した活用が期待される。

▼図5:広告の購買方法と利用目的の違い

これまで述べたように、今後の成長見込みとは逆行して、質の悪いインプレッション(広告表示)と運用型広告特有の配信最適化により、運用型広告ではファネル上流のブランドリフトのパフォーマンスが下がってしまっているわけだが、これは現状の使い方でブランド広告を配信した場合に限った結果である。実際は運用型広告を上手く活用することでブランドリフトを得ることが可能であり、上記で効果が低いとされているブランドの認知やメッセージ連想などのファネルの上流部分で高いパフォーマンスを発揮するポテンシャルが運用型広告にはある。

上述の白書では、運用型広告でブランドリフトを高めるための4つのポイントについて紹介しているが、その中でも特に重要なのは、運用型広告それ自体に問題があるのではなく、それがどのように運用されているかにある。

事例:ビューアビリティの高さがブランドリフトの高さに直結した事例

ここで、運用型広告をブランディングに活用した事例を紹介する。この事例はビューアビリティ測定とブランドリフト測定を同時に実施したもので、両社のタグが統一されているコムスコアのvCEとカンター・ミルウォード・ブラウンのBLIによる合同調査である。この調査結果(英国)からは次のような結論が得られている。

  • ビューアブルかつ良い広告クリエイティブが配信されれば、運用型広告であっても高いブランドリフトを生み出すことができる。
  • ビューアビリティを最適化することで、キャンペーンの効果をさらに向上させることが可能である。
  • 広告クリエイティブの質がキャンペーンのブランドリフトを左右する重要な要素であることは、運用型広告においても変わらない。

上記を踏まえ、以下では具体的な事例の内容を紹介していく。

最初に、キャンペーン全体がどのような層にリーチしたかという点では、キャンペーン全体のリーチの内、約6割がコミュニケーションターゲットにリーチすることができていた。また、コアターゲットへのリーチもキャンペーン全体の4割強を占めていた。冒頭でも触れたように、ビューアビリティやブランドセーフティが主に騒がれているが、キャンペーン成功のためには、実際のターゲット精度を検証し、効率よくコミュニケーションターゲットにリーチすることも欠かせない観点である。

▼図6:キャンペーン全体のリーチ

上記の結果、キャンペーン全体を通してブランドは認知を大幅に強化した。また、広告接触群全体(ビューアブルではない広告接触を含む)よりも、ビューアブルな広告への接触群でより大きな効果が見られることから、ビューアブル・インプレッションがより大きなブランドリフトをもたらすことが明らかになった。

▼図7:キャンペーン全体のブランドリフト

また、このキャンペーンにはAとB、2つの配信パターンが存在しており、その中でも特に配信Bのビューアビリティがより高かった。なお、配信AとBには同様のクリエイティブを配信しており、ともに英国ノルムを上回るビューアビリティだった。

▼図8:配信Aと配信Bのビューアビリティ比較

配信Aと配信Bの効果(ブランドリフト)を比較すると、ビューアビリティがより高い配信Bで、より大きなブランドリフトが生まれた。しかも、配信Bは広告接触の平均フリークエンシーが配信Aよりも低かったにもかかわらず、ブランドリフトではより大きな効果を生みだしていた。(平均フリークエンシーは、配信Aで12回、配信Bでは5回)

▼図9:配信Aと配信Bのブランドリフト比較

上記のように、同じ広告クリエイティブを配信した際、よりビューアビリティの高い配信でより大きなブランドリフトを得られることが分かる。特に本事例では、広告接触の平均フリークエンシーがより低い配信Bでその効果が得られており、ビューアビリティの高さがデジタル・キャンペーンのブランドリフトに大きな影響を与えることが分かる。言い換えれば、ビューアビリティを高めることが、ブランドリフトを生むことに直結するということにもなる。

そして、ビューアビリティとブランドリフトを同時に計測することで、ビューアビリティの調整とそれによる効果を把握することが可能になる。

ビューアビリティ×ブランドリフトのW測定がブランディング成功の鍵に

冒頭でも述べたように、運用型広告のブランディング利用は今後も増加していくことが見込まれている。低コストを享受しつつも、より高いブランドリフトを追求していくためには、ビューアビリティとブランドリフトを一貫して計測し、現状のダイレクトレスポンスを基準とした使い方とは異なる知見を蓄積していくことが重要だ。ファネルの下流だけでなく上流でも運用型広告でブランドを成長させることができるようになることは、競合ブランドに対して中長期的に大きな差を生むことになるだろう。

これをサポートすべく、コムスコアとカンター・ミルウォード・ブラウンはパートナーシップを締結し、ビューアビリティおよびオンターゲットリーチを計測するvCEとブランドリフトを計測するBLIのタグを統一した。この提携によりアドベリフィケーションからブランドリフトまでの測定を一貫することで、デジタル・キャンペーンの全体像をより正確に把握することを可能となった。これによりマーケターやブランド担当者は、配信した広告のビューアビリティだけ、又はどの位のブランドリフトがあったかだけを個別に捉えるのではなく、その広告がどの位の割合でターゲットに届き、その中からどの位のブランドリフトが生まれたかを総合的に理解し、何がボトルネックとなっているのか、どのような改善がより高い効果を生むために必要かを示唆として得ることができる。

またその際、配信した広告クリエイティブに問題があるという結果になることも起こり得る。そのような場合は、配信する広告クリエイティブを事前に評価することで、キャンペーンの確度を高めることも有効だ。カンター・ミルウォード・ブラウンが提供しているLinkNow for Digitalを活用すれば、デジタル特有の環境においてクリエイティブがブランドの装いで記憶され、意図したメッセージを伝え、態度変容を起こすのかを事前に確認することができる。クリエイティブのテストというと、A/Bテストと混同されがちであるが、A/Bテストはダイレクトレスポンスを目的とする際のテストであり、ブランドコミュニケーションのためのクリエイティブテストとは一線を画す。A/Bテストに欠けている典型的要素としては、ブランドコミュニケーションに不可欠な1.ブランディング:ブランド名を記憶に残せたか、2.コミュニケーション:意図したメッセ―ジを伝えられたか、という2点が測定できていない点が挙げられる。さらに、ダイレクトレスポンスによる最適化は、オーディエンスが誰なのかすら見えなくしてしまう。以下の“Digital marketers suffer from blind faith”の記事では、デジタルマーケティングで慣行となっているアプローチの問題点が紹介されている。

Article by Nigel Hollis | Kantar MillWARDBROWN
Digital marketers suffer from blind faith

 

  • comScore validated Campaign Essentials (vCE)
    vCEは、広告キャンペーンに関する深い洞察やレポーティング、デイリーのアラート機能等を提供する広告とオーディエンスの配信検証ソリューションです。vCEは、ブランドにとって安全で、正しい地域、ノンヒューマントラフィックのない環境においてインビューで配信された重複のないインプレッション数を提供します。また、そのインプレッションがターゲットオーディエンスに対してどのくらいリーチしているかを評価します。
  • Brand Lift Insights(旧AdIndex)
    カンター・ミルウォード・ブラウンのBrand Lift Insights(BLI)は、デジタル・キャンペーンがブランド指標に与える影響を特定する、世界で最も有効なソリューション。20年前の史上初のバナー調査以来、進化を続ける多様なデジタル媒体で15,000回以上の調査を実施してきた実績を持つ。この調査は、条件を揃えた広告接触群と統制群を比較し、デジタル・キャンペーンがブランドにもたらす影響を明らかにするもので、日本ではカンター・ジャパンが提供している。関連リリースはこちら
  • LinkNow for Digital
    カンター・ミルウォード・ブラウンのLinkは最も普及している広告クリエイティブの事前テストで、世界で1時間に1つの広告クリエイティブが評価されている。LinkNow for Digitalは、Linkシリーズの中でもデジタル・キャンペーンにおける最適な広告クリエイティブ選定にフォーカスしたソリューションで、広告が掲載される環境を再現して広告クリエイティブを評価することができ、日本ではカンター・ジャパンが提供している。

※本記事は、カンター・ミルウォード・ブラウンのGlobal Brand Director、Duncan Southgateが寄稿した記事を一部引用してカンター・ジャパンが独自に作成したものです。

※本文を引用される場合は、出典が「カンター・ジャパン」であることを明記してください。

コムスコアについて
comScoreはあらゆるオーディエンスやブランド、消費者動向を測定するクロス・プラットフォーム測定のリーディングカンパニーです。ダイナミックなクロス・プラットフォームの世界に新しいモデルを創出するため、2016年1月にRentrak Corporationと合併しました。これまで培ったデジタル・テレビ・映画の分野における知見と膨大なデモグラフィック情報を組み合わせ、消費者のマルチスクリーン動向を壮大なスケールで数値化します。このアプローチにより、メディア企業は自社のオーディエンスを最適化することができ、マーケティング担当者はこれらのオーディエンスにより効率的にリーチすることができるようになります。世界75カ国以上において3,200社以上のクライアントを持つコムスコアは、測定の未来を提供しています。コムスコアの株式は現在、OTC市場にて取引されています(OTC:SCOR)。詳しくは、comscore.com/jpnをご覧ください。

 

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